ドンペリ親父



太陽が直球で勝負を挑んでくる夏日。

猛暑だいすき(←どうかしてる)なわたしはウキウキと、「さあ、今日はスタジアムでフィオレンティーナ(イタリアの伝統あるサッカーチーム、スミレ色がチームカラー)の試合観戦だ!」と盛り上がっていた。
夏の夕方にサッカー観てわーわー言いながら、売りに来るペーパーカップのビールをのむのは本当に幸せなんである。
ぬかりなくムラサキ色のキャミソールを着こみ、さあもうすぐ出かけようかな、という時。

そこに電話。

「パパじゃ」
毎度ひざの砕けるタイミングで一方的に電話してくるうちの父である。
「ドンペリとバラの花を渡すからちょっとそこまで出かけてきなさい」

はあ?

意味わかんないわたしは呆れて受話口を見つめた。
またしてもいきなり、何を言い出すのかこの父は。

「な、なんでドンペリ?」
「何を言うちょる。ドンペリがなきゃ始まらんじゃろう」

ドン・ペリニヨン。お高い感じのシャンパンでございますわね。
ホストクラブで、ご贔屓ホストの売上をアップせんとてお姉様がたが、ピンクやらゴールドやらをぽんぽん抜いて貢ぎ倒すので有名な。
ホストのいる店なんて、池袋の焼酎パブしか行ったことないなあ(接待で)。
ホストはなかなか可愛かったけど、あの店はドンペリなんてなかった。「いいちこ」しかなかった。

いや、話がとんでもないほうに逸れた。

そういえばうちの父は、以前にもいきなりバラの花束と特上うなぎ2人前を持ってとつぜん来襲したことがある(バックナンバー参照)。
あれはわたしの誕生日だった。

あ。

わたしは、ちっちゃい子にさとすのと同じ口調でゆっくり、電話に向かって言ってみた。
「あのねえ、パパ。今日、あたしの誕生日じゃないよ? 今日は、マサキ(下の弟)の誕生日だよ?」

「ありゃ」

素でおどろいてる。本気で弟の誕生日をわたしのと勘違いしていたらしい。

「うーむ、そうじゃったか。・・でもバラの花がしおれるからそこまで取りにきなさい」
「いきなり言うなて! あたし今でかけるところだからダメ!」
「なんじゃ、花火大会か」
「サッカー観にいくの!」
「あー、一緒に花火見物に行く彼氏がいないんじゃな、かわいそうに」
「うるさいわあ!」

よけいなお世話がダブルにもトリプルにも複合して、ほとんど神業に近い。すごいぜ父ちゃん(こぶしを握りしめながら)。
いつか投げ飛ばす。

それはそれとして、勘違いされていたわたしの誕生日だが、実際は上記↑の関西出張バッチかぶって25日だ。
よそさまの土地でお仕事とともにスタートするわたしの一年。
幸先いいんだか悪いんだかわからないが、とにかく東京にいないことだけは確かである。

ので、25日にうちの父が再度ドンペリ(くどい。以下ドン)ごと来襲したとしたら大変だ。
留守を守る同居人、ジャンクさんにわたしのドンを飲まれてしまうではないか。

なので、先回りしてもらって来た。
きのう(13日)に父の独居するマンションを「うああああ汚ねええ男やもめはこれだからあああ殺菌!消臭!消毒!クリンナップ大作戦」するついでに貰ってきた。

重い。96年ヴィンテージのドン、重いよ物理的に。
箱に入って解説書がついてる酒なんてはじめて見た。

「アメ横で安かった」と得意げに父が言ってますが、えー、オトン、その、
まいど高そうなもので人を驚かせて実はこんなに激安だった、ってバラすのやめようよ。高級感かもし出してくれよ。

持ち帰ったドンを見て、
「じゃあ、キミの出張中、25日になったらひとりで飲んでおくから! 安心して関西行ってこい!」
と、同居人ジャンクさんが言うておられます・・・ううう。
そりゃ嬉しいバースデーですこと。

これまでの誕生日について回想してみた。
いい年になってもやっぱり印象に残る日ではあるんで、わりと記憶してるもんですね。

立って目を開けてるオカンと最後に会ったのも誕生日だったな。
わたしは親不孝なんで家出中だったのだけれど、オカンがどうしても好物をつくって食べさせたいというので、しぶしぶ実家に行ったんだった。
ふてくされて。
「食べたからもう帰る」とっとと立ち去ろうとするのを玄関で立ってこっち見てたオカ、あ、やばいわ、
あーすいません一時間ほどめそめそしてきます。

・・・
えー、すいません。文章書いてる最中にいきなりオチるとは末期です。しつれいしました。
で誕生日の翌日にオカン倒れてそのまま植物人間になったんだった。そんで死んだんだった。
うーむ、記憶、暗い。

では一番びっくりした誕生日の記憶を。
「うなぎと花束」よりもある意味でショッキング。

いくつだか忘れたけど十代の時。実家。
家族は全員、広島に行っていてわたしだけ一人で先に帰ってきてた。
24日の夜に自宅独り占めじゃあ! とか言って廊下、っても大きな窓に面して一部屋ぶんほどあるカーペット敷きの廊下、いっぺんそこで寝てみたかったので、お布団を敷いた。
なぜそこで寝たいか。
天井が高く、ちゃちい樹脂板ではあるけれど、いちおう「天窓」があったからだ。
天窓から月明かりに照らされて眠るなんてろまんちっくだわ・・・。
夢見がちにもほどがありますが、まあ寝ました。
日付け変わって、25日の深夜3時頃。

どどどどど、ばりばり、うぎゃああっ!!
どす、ぎゃっ、どたん、ばらばらばら、ぎゃああああおおお!!

いきなりおなかの上で大騒動が巻き起こったので仰天、飛び起きましたよ。

強盗!? 空襲!? ポルターガイスト!?
必死に灯りをつけたら、そしたら。

・・・屋根の上でケンカして走り回ってたネコたち、が。
天窓を突き破ってわたしの上に落ちてきたんでございました。
・・・・・。
は、ハッピーバースデイ自分!(うつろな目で)

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