無駄走りのススメ。


たとえばわたしが死亡して(いきなり縁起でもない書き出しですいません)
額に三角の布つけたわかりやすい亡者の姿でどこだかに行くわけですよ、天国の門とか、地獄の一丁目とか、死後の世界入国管理局とか、大霊界税関とか、まほろば改札口とか、彼岸チケットセンターとか、ああわかんなくなってきた、とにかく「あの世」の入り口行くですよ。
そしたらヘブンズゲートの真ん前に閻魔帳をもった閻魔サマがいて両脇にケルベロスがいてその向こうでイザナミが腐乱しててオルフェウスがびっくりして桃投げたりしてますよね、このイメージいろいろ混乱してるかもしれませんが、あっち側に行く時はたぶん審判とか試験とか荷物検査があると思われます。

で、閻魔サマが言うわけです。

「お掛けください」

はい、と良いお返事をしてわたしは入室しきちんと扉を閉め、閻魔サマに折り目正しいお辞儀をし、椅子を引き、着席します。
そんな就職面接みたいなあの世はいらんっ。

実際はもっとフランクです、って行ったことないけどね、閻魔サマの前でオールスタンディング、ドリンク付き。「死後の紅茶」飲みますね。

ハナシ全然進まないな、どうもすいません、

ともかく、審議を受けます。地獄極楽どっち行き? とか、第何天国、の所属はどこ、とか、冥府の端っこで串刺しに決定、とか。たぶん。
凶悪犯罪を犯したヒトの場合は二十歳未満でも家庭裁判所から検察官送致いわゆる逆送を受けて起訴、裁判、有罪、少年刑務所、仮出獄、保護観察、オイどこへ行く、死後の話だ、戻りなさい自分。

脱線ばかりですみません、はい簡潔に。

お棺のフタを閉じた後でですね、だれかに、なにかに、

「あなたが人生で学んだ、いちばん重要なことはなんですか?」

と、訊かれたとしますわね。

そしたらわたしは自信まんまんで、そっくり返るほど胸を張って言うわけです。

「無駄走り、です!!」

うわあ、言い切ってしまった。
さすがにこのトシ、やってることも言ってることも少々アレとは言え一人前のオトナだい! と威張ってもおかしくない歳にもなって、
「(真剣に)人生でいちばん重要なのは?」
「(嬉しげに)無駄走り!」
即答してるし。だいじょぶなのかこのヒトは。

ご懸念はじゅうじゅう承知、した上でやっぱり言わせてもらいます。
「わたしの今までライフでもっとも役に立ち、もっとも重要だったのは、やはり無駄走り。であります」

無駄走りとはなにか。
無駄に走ることである。
それじゃわからん。

ええとですね、サッカーとか観ます? 観ません? そうですかでも構わずサッカーのハナシしますけどね、
試合をしています。敵味方のプレイヤーが入り乱れてボールを追いかけております。
パスがきれいにつながってゴールまで、すぽーんと入ればいいんですが、なかなかそうはいきませんね、
サイドをがーっと上がっていってそして今まさにゴール前に! シュートする人! 誰かシュートする人にパスを! パスを!て見回して、探しても誰も上がってきてない、後方でおたおたしてるばかりで使えない!
迷ってるうちに敵方のディフェンダーに「御用だ御用だ」挟まれて、ボール取られてしまいます。
せっかくのチャンスが、フイに。
これはもったいない。
ので、
ゴールを決めるのがお仕事の人、とくにフォワードの人は、前方にパスがつながるかもしれんけん、と思った瞬間にもう前方に走りこんじゃってシュートチャンスを狙っていただきたい。
ボールがそっちに回ってこないかもしれない、敵にカットされて反対側に持ってかれてしまうかもしれない、それでも万に一つの可能性に賭けて、
空いちゃってるスペースに全力で走りこむ、
一試合のうちに何度も何度もうんざりするほど何度も何度も、
空いてるところにボール来ても大丈夫なように、
無駄でもなんでも走りこむ。

それがすなわち「必殺・無駄走り」ですよベッケンバウアーさん。
べつにサッカーに例える必然性はなかったような気もしますがカール・ハインツ・ルンメニゲさん、
なんとなくニュアンスつかんでいただければ幸いですユルゲン・クリンスマンさん。

つまり、やってくるかどうかわからないチャンスに向けて、
いっけん無駄に見える努力を全力で、くりかえし、長期的におこなうこと、が
「無駄走り」なんですね。

これはほんとに筋肉つきます、て、フィジカルな話に限らず。

たとえばある種の技術をしっかり身につけたくて、一日5分でもヒマ見つけて毎日、2〜3年もやってごらんなさい。
積み重ねってすっごいもんですから。
おなじことを集中して三ヶ月で習得した人がいるとしましょう。
それって、忘れるのも三ヶ月なんですよ。
3年かけて身についたことは、なくすのにも3年かかりますし。

ひとは何でも、だいたい「無駄だろう」と思って、なんとなく続けることをやめちゃう生き物のように思います。
それがすぐに利得に直結しないことだったら。
数年先にどかーんと目標設定おいて努力続けようとすると、たちまち疲れてしまいますし。
三日坊主でやめてしまう。
無駄だと思って走らない。

はい、もったいないオバケ来ましたー。
マジでもったいないです。無駄走りは、かならず成果あげるんですとも。
無駄走りだけで生きてきたわたしがグッと親指を立てて保証しときます。

「無駄かなぁ」と思っても、やめないでねー。
ダメもと! と叫びつつ何度でもチャンスに向かって走りこんでみてねー。

飽きずに何年もこんなんしてて自分てアホかなー、と思うぐらいでちょうど良し。
無駄走りは人生の宝です。(閻魔サマの前で最終弁論終わり)


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