ことしもよろしく。


いきなり新年からいたずら電話のはなしである。すいません。

ごく若い頃、某中国雑貨店につとめていた。すっかんぴんのバイトっ子である。宵越しの銭はない。
当時のことは、以前「ハトの恩返し。」にも書いたので、お屠蘇でも飲みながらついでにバックナンバーも読んで頂けますと光栄です。

さて、話は昭和。
まだわたしが定住・農耕を始める前のこと、狩猟・採集民として主に昆虫などを蛋白源として生命を維持していた頃。ああ嘘です。ただ貧乏住所不定ってことを言いたかっただけです。
どういうわけか男子系ファッションを心がけていたわたしは女子のみなさんにわりとモテていた。ふふん。ええい、こんなモテ自慢は自慢になってない。
呼び名はあたりまえに「三上君」だ。ちなみに部長にも社長にもそう呼ばれていた。そんな位置づけ。何者。
力仕事は三上君(え、オレほねほねの超やせっぽちなんスけど)、怖いお客さんの応対も三上君(そっちは得意)、そして、ヘンないたずら電話のトラブルシューターも三上君の役割であった。

ファッションビルの最上階、おしゃれでおしゃまな小物屋さんが立ち並ぶフロアである。
店員は、かわいこちゃんが多い。

そのあたりのことを見越してか、ヘンタイのお客様が気味悪い来店を日々繰り返したり、レジのオネーチャンに突撃プロポーズをおこなう、などの蛮行がよく見られた。
だいたい三上が出て行ってにらみをきかせるなどをしたので、ええと、したからか? 直にやってくることは少なくなっていたある時。
はあはあ言ったりすけべいな質問をするいたずら電話が、そのフロアの各店に順繰りにかかってくるようになった。

犯人の作戦、わかりやす過ぎ。ビルのテナントの電話番号いちらんを見ながら、最上階フロア狙ってちくちくかけているのであろう。

最初にマイストアに電話があった時、運悪く応対したユキたんがみるみる赤青白のトリコロールみたいな顔色になったので、わたしはそれと察して無言で電話をかわった。

「はあはあ」

スタンダードなキモ電話。

「お客様、当店になんの御用でしょうか」

わたしは地獄の底から響くような地声で言った。

コンマ一秒で電話が切れた。

すごい声で、わるかったな。

当時わたしはすばらしく暴力的なヴォイスをしていた。今だって実はそうなのだが、仕事は仕事で営業用レディヴォイスも発声できるように進化した。
その他、とろそうな鼻声ヴォイスや、いかめしい先生ヴォイスや、どうなさいましたカウンセリングヴォイスも出せるようになった。人間がんばれば空でも飛べる。

閑話休題。

三上が電話に出るといたずら電話が一発で切れる、という噂はフロアに広まり、かかってくるたび遠くから呼ばわれては出動。
いろんな店で電話に出るたびヘンタイ電話(たぶん同一人物)は、「またお前か」という言外のため息をのせてぷちんと切れるようになった。

勝利勝利! ダミ声の勝利!
と、ことほいでいる暇もなく、敵はマジ怒りでキレたのか、今度は営業妨害っぽい無言電話をかけまくるようになった。
わたしが出て、もう生きているのもつらくなりました……、と思ってくれてもいいぐらいのパンクな罵詈讒謗を吹き込んでもてんで切れない。
犯人も学習して図太くなったのか、こわいから受話器を置いて聞かないようにしているのか知らないが、とにかく切らない。

こっちが切ると何度もしつこくかかってくる。

わたしたち、中国雑貨店のおしゃまメンバーは額をつき合わせて相談した。

どうする?
うーん、あれだ。
最終兵器。
あいつに任せよう。

「あいつ」とは、商品の中国製ブリキにわとり人形。

スイッチを入れると、
「こっこっこー、くわっこっこー、こけっこー、くわっこっこー」
と電池切れるまで鳴き続けつつ、内蔵したタマゴのおもちゃをぽんぽん生み出すくだらなさ世界一のおもちゃだ。

以降、そのいたずら電話があるたびに、電話口で「こっこっこー」と鳴かせたまま放っておくことにした。

いっぺんで、うちの店にはイタ電が来なくなった。

その後、ほかの店からSOSが発信されるたびにわたしはにわとり人形を持って駆けつけ、
「こっこっこー、くわっこっこー」と電話口で鳴かせた。

結果、そのフロアからいたずら電話の被害は消滅した。

すばらしい。すごいぞ、にわとり!
そんなわけで、鶏、バンザイ!

酉年あけましておめでとうございます。

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