カーンとホタテと連合軍と。


オリバー・カーンとジャイアンが、同じ誕生日であることに気付いてしまった。
ああ、なんだか、やっぱり。


スーパーマーケットの鮮魚売り場にて。
仮面のようなメイクをしたギャルちゃん二人が、この世の終わりのような大騒ぎをしていた。
生まれてはじめて生魚を見たようだ。
カレイの切り身を指さして、
「うぎゃあ、うぎゃあ、うぎゃああ〜!!」
イカを見て、
「ひいいい!うわああ!マジでこれありいいいいい!?」
牡蠣を発見して、
「いやああああああああああ!!ぐわあ!怖すぎるうう!!」
白子に遭遇して、
「ぎいやああああ!!ない!ない!これはない!これはありえない!!」

・・・キミたちのほうが、ありえない感じがするのだが。

しかしまあ、魚介といえば、わたしも人のことは言えない。
はじめて活ホタテを頂いた時。
クール宅急便の箱を開けたら、わさわさわさわさ大量に入っていた。潮の匂いがきつく、海草のこびりついたでっかい殻と、そこからはみ出ている得体の知れないべれべれが怖ろしかった。
そー、っと殻をつついてみたら、ばん!と激しく閉じて、わたしは飛び上がってしまった。
そのまま半べそで固まること30分。
やむないので、ネットでさばき方を調べた。
軍手をつけて、びびりながらホタテを解体した。
「絶対開かん」と強硬に口を閉ざす敵に、鬼のような気持ちでヘラを突っ込み、きゅきゅきゅきゅきゅ〜と身をはがす。
あるところまではがすと、「む、もう死んだ」と言ってホタテは口を開けてしまうのだ。
念仏とか、いろいろ訳のわからない言葉を唱えながら心を無にして解体し続けた。
「料理の道は〜 鬼の道〜 死して屍〜 拾う者無し〜」

そんな武者修行の成果あって、今では活ホタテだろうとタラバ蟹だろうと巨大烏賊だろうと何がやってきてもいさましく立ち向かう。
はずなのだが。
ホヤがごろんと台所に転がっていたら、わたしはやはり硬直する。白子も怖い。アンキモの煮つけをつくろうと思うたびに躊躇する。
肉でも、ややこしいパーツはだめだ。鶏をまるまる解体してくださいと言われたら走って逃げる。チキンから逃げだすチキン野郎だ。
先日、プロ用の食材マーケットに行って冷凍ケースの中をのぞいた時にはヨーデルorホーミーで絶叫しそうになった。
何が入っていたのかは訊かないでほしい。
ギャルちゃんと大同小異である。
そんなわけで、これからもスーパーの陳列ケースをのぞく時は純粋なびっくり精神を忘れずに、ちょくちょく気絶しながら生きていきたい。


あんまり眠ってないと、視界や聴覚が歪みますわね。

2時間しか眠らずに、朝っぱらからドイツ語の講義を受けた。
先生はとっても歌が好き、だ。その日も授業中に第九を歌わされた。
Rの発音、巻き舌ばりばりで大合唱だ。
ふるるろろろろろぉいでえしぇーんねるるるるげっっってるるるるるるふんけん♪
わー、たのしいなー。
睡眠時間さえ足りていれば、とっても楽しかったと思う。
あきらかに脳に酸素が欠乏した状態となり、かなぁりヤバい状態に陥った。
白いね、世界が。なんかチカチカしてるし。なんか回ってるし。
ファンタジー。

無我の境地で授業を終えて、ふらふらとさまよい帰る途中。
バスに乗っていたら(わたしは一番前の席が好きだ。わーい子供ー。)前を走っているトラックの、後部が見えた。
右下にステッカーが貼ってある。
「連合軍」と書いてある。
連合軍。
…て、マジすか!
一気に目がさめた。
え、え、戦争始まったの?
いつ、うそ、やば!
今朝早かったから、ネットのニュースも見てないよ、わーわー。
連合軍てどことどこの!ひゃー!
大慌てして、目をこすりながらもう一度トラックを見たら、
「適合車」
だった。

わたしは、デパ地下のお惣菜売り場で、「お正月の準備に、散弾銃はいかがですか?」と言われて愕然としたことのある人間だ。
「三段重」だっちゅーねん。
「銃器、銃器」と言っている人がいるから、物騒だなー、と思っていたら「住基ネット」の話だったり。
頭の中がトゥーマッチバイオレント、なのだろうか。
若い頃サバイバルして生きてきたので、つねに意識が非常時下にあるのかもしれない。
落ち着け、三上。

岡山の友人がとても上品で美味しいお菓子をくれた。
「烏城通り」というのが、その詩情あふれるお菓子のお名前だ。
でもわたしには、「烏賊踊り」に見える。どうしても。
お菓子の箱を見るたびに、「♪函館名物、イカ踊り〜♪」と、脳内で大群集の大乱舞が始まってしまうのだ。
こういう連想や想像がどういう体験から生じているのか、わたしにはさっぱりわからない。

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